Ingress。それは緑と青の勢力に別れて覇を競う陣取り電脳ゲームであるモバイルマップから人工物(ポータル)に勢力色でマーキングし、マークされた三点を結ぶことによって陣地(コントロールフィールド)を形成する。自由の青、共存の緑、果て無き争い。

 人々はIngress熱狂し、2014年にはモバイル圏外のポータル申請のために電波塔を設置する者が現れた。そしてその年の後半にはポータル維持のために土地を取得、購入する者まで出現した。

 すべての空きポータルが緑か青に染まり尽くす頃、人々はついにIngressポータルにするためだけに(芸術的な)モニュメント建築し始めた。新しいポータルはできるだけ他のポータルと離れていたほうがコントロールフィールドが大きくなるため、地球上のありとあらゆる白地図ターゲットになった。 ポータル建築は前述のように私有地化してから行うのがセオリーのため、なんでもない砂漠僻地の空き土地が高騰し、空前の土地バブルが訪れる。

 ポータルは一回マーキングしただけでは安心できない。常に敵勢力に塗り替えられるリスクを負っている。そのためポータルを維持するために所有した土地に住み、また管理するため子孫を残す一族が現れ始めた。

 これらの熱狂によって不況大都市の過密化と地方過疎化、そして少子化までもが一挙に発展的解決をみる。

 まだだ、まだ足りぬ。なぜあの土地人間Ingressをやらずに銃で射ち合っているのだ?啓蒙せねばならぬ。政情不安地域ではポータルは皆無、土地資源ばかりがある。啓蒙せねばならぬ。すべての国家人種民族宗教は青か緑に染まり、かの星はついに全地域が無血戦争状態へと突入する。

 この星はまだらの青と緑で染まった虎となった。もはやどこへも行けぬ。まだだ、そうして人々は天を仰いだ。月と太陽と星々が輝く天を。Ingress宇宙戦争元年である。その翌年には火星行きの民間ロケットが飛ぶように売れたという。

 そして年月は流れる。

 いつかの未来地球。毎年そうしているように、満天の星々の下、子供たちと一緒に空を見上げながら、優しい顔で語る一人の女性がいた。

「あれがベガ、Lv53万のポータル。そしてアルタイルデネブ

きらきらと光る星を指でなぞりながら、言う。

「これらを結んでいるあの三角形を、夏の大三角と呼ぶのよ」

僕が4歳のとき、父は頼もしきXboxを買ってきたんだ。デコボコとしててどデカい2001年のアレさ。僕はありとあらゆるゲームを父と山ほど一緒にプレイして楽しんだ、6歳のときに父が死ぬまでね。

このコンソールには10年間さわれなかったんだが、あるとき起動してみると、気がついたんだ。あの日がくるまで僕達はレーシングゲーム『Rally Sports Challenge』をやり込んでいた。そしていろいろといじくり回してみると……僕はゴーストを見つけた。文字通りね。

タイムレースがプレイされた場合、今までで最速のラップがゴーストドライバーとして記録されている?ああ、そのとおりだった。彼のゴーストはまだ今日もトラックを走っている。それからゴーストに勝てるようになるまで何度も何度もプレイしたんだ。1日が終わる前に、ゴーストよりも前に出てそれを追い越した。そして……。

僕はゴールライン目前で止まった。ゴーストを消すことだけはしたくなかったんだ。